
SNSにみるシェアの心理
現代のトレンドを徹底分析!
取材・構成・文=藤谷良介 / 写真=内田トシヤス / 資料提供=電通メディアイノベーションラボ
2018.9.15

電通メディアイノベーションラボ
副主任研究員 天野彬さん
1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。
2012年に株式会社電通入社。マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
SNS のシェアは今や現代人に欠かせなくなったコミュニケーションツール。
なぜ人はシェアをしたくなるのか、その本質を、気鋭のプランナーである電通メディアイノベーションラボのメディアイノベーション研究部・副主任研究員である天野彬さんに、様々な角度からうかがった。
01. シェアの分類
「SNSのシェアは、大きく分けて“自己表現型”、“社交型”、“インフォメーション型”の3つに分類されます」と天野氏。
その根底にあるのは、承認欲求だと話す。「MITの臨床心理学者、シェリー・タークルの先行研究等でも発表されていますが、シェアをすることが現代人のアイデンティティに深く根付いていて、『何をシェアするか』が、発信者自体がどういう人かを示すツールになっています」
【自己表現型】・・・ 例えばインスタグラムで有名になったネイルアーティストなど、発信者自体が自己表現をプロデュースするタイプ。
【社会型】・・・ シェアすること自体で、あるコミュニティーに属する。シェアの内容で、コミュニティの中での位置が左右される。
【インフォメーション型】・・・ 自分が使って良いと思う商品やコンテンツなど、役に立つ情報をシェアする。それによって教育欲を満たす側面も。
02. SNSツールでの違い
上の図の中で支持の高い3つのツールについて天野氏が解説する。
「まず、ツイッターは日本語と相性が良く、匿名で、自分がフォローしていない人のツイートもリツイートできるのでシェアが拡散しやすい。一方で実名のフェイスブックは、現実世界に結びついた使い方が多い。日本では友人関係も仕事等の人間関係も区別されずに繋がるので、敬遠する若者もいます。日常を頻繁にシェアするというよりも、卒業や旅行など節目の報告が中心。近年、隆盛を誇るインスタグラムは、スマートフォンの一般化、そして写真という手軽さ、特有のオシャレな世界観で女性を中心に支持されています。特にここ1、2年の“インスタ映え”は、マーケティングに欠かせない要素にもなっていますね」
03. #進化するハッシュタグ
ここ5、6年で顕著なハッシュタグの進化は「インスタグラムの特性に密接に関係している」と天野氏。「もともとインスタグラムは自分の世界観を表現し、シェアするのがメインのプラットフォーム。その中でオシャレな写真だけでなく、その写真を使って人とコミュニケーションすることがハッシュタグ文化の隆盛に繋がっています」
04. シェアされやすい“STEPPS”とは?
シェアされやすいのはどういった要素なのだろうか?「アメリカのマーケティング学者によると、“STEPPS” という要素に該当するという研究があります。私が考えるシェアは自分で発信するスタイルなので少し異なりますが、広い意味でバズるのは、この6つのどれかが当てはまり、合わさるとより相乗効果があると言えますね」
05. シェアから得るものとは
SNSを使ってシェアをする楽しさ。「その大きな理由の一つに『いいね!』の発明があります」と天野氏は分析する。「今の情報技術の特徴は、様々なことを“可視化していくこと”。これまで見えなかった自分の評価や支持者(フォロワー)、影響力などが『いいね!』によって可視化されて、それがよりシェアをしたくなる気持ちを駆動させています」そして、シェアによって人が得ているものとは?
「シェア=情報伝達が第一義ですが、インスタで顕著なように、まったく繋がっていない世界中の人と偶発的に出会い、本来そこに生まれるはずのなかった繋がりを生んでいる。SNSのシェアの本質は、単純な情報拡散にとどまらず、人と人の間にまだない繋がりを生む行為なんだと思います」
06. 今後のトレンド予想
天野氏が考える、今後のSNSシェアのキーワードは下記の3つ。まずESとは、インスタの新機能“ストーリーズ”のような、儚くて(エフェメラル)、短い(ショート)すぐに消える要素。そしてMは「盛る」。「SNOWやフェイスフィルターがシェアの敷居を下げ、シミュラークルが起こる可能性が高くなります」。さらにLは、ツイキャスやインスタグラム、フェイスブックライブ等、 リアルタイムのライブ感覚。よりシェアは加速度を増して進化している。